大学図書館でのバイトでは、学部生の卒論に触れる機会が多い。基本書架整理やデータ整理で関わるだけなので中身を見ることはほとんどない(といいつつ私は隙を見て読んでいる)が、タイトルなんかを見て度々驚くことがある。
びっくりその1
マッチングアプリの話題を取り上げる人がひと学年に1人はいる。大学4年間の集大成がマッチングアプリの研究でいいんだ…と個人的には思う。
社会学系の学部ならまだアリなのか?と思いつつ、でもうちは経済学・経営学がメインの大学なのだ(妙な大学改革のせいで何を勉強する大学なのか分からなくなってはいるが)。どんなことが書かれているのか気になり中をパラパラ覗いてみたが、マッチングアプリの普及率だとか利用したことがあるかのアンケートだとか…甘めに見てマッチングアプリ"事業"って部分が経営っぽい…(のか?)
「オタクの聖地巡礼による地域(経済)活性化」というテーマはひと学年に3人はいるが、こちらの方がまだマシ、経済学・経営学に寄せようとした努力が垣間見えて大変宜しい。
こんなテーマを選ぶのはうちの大学のレベル故か?と思い「マッチングアプリ 卒論」で検索してみたところ、知恵袋でマッチングアプリに関する卒論を書きたいですといった質問がどさどさ出てきた。大体2020年以降の質問で、THE現代の大学生って感じだ。
びっくりその2
指導教員の専門とは全く違う分野の卒業論文を書く人が多い。例えば、貿易論が専門の教授なのに、キャッシュレスの話題や貨幣の話、ブロックチェーンに関して書いていたりする。もっと酷いのは、マネジメントだか(なんだか忘れたが)経営学ど真ん中な事柄をテーマにしていた。流石に経営学の範囲で卒論を書くならそれを専門にしている教授のゼミに入れよと思う。まぁ、希望したゼミを落とされまくったあげく拾ってもらえたのが分野外のゼミだった可能性も否定できないけど…
「卒論 テーマ」かなんかで検索して出てきたサイトを適当にみてみると、自分の興味・関心のある事柄を広げようと書いてある。こんなアバウトな事を書くからヘンテコなテーマや焦点のずれたテーマを設定する事になる(指導教員どこ行ってん?)。
せっかくその論文で学位を取るんだから、自分の趣味とか好きなことからは離れて、ちゃんと社会で何が問題になっているのかを探し、それを4年間勉強した学問の中で解決するような論文を書くべきだと私は思う。
つまりマッチングアプリ論文を書くなら、晩婚化や少子化に対する問題意識がはじめにあって、それから問題解消の手立てとしてマッチングアプリに着目しますというのが正しい順序のように思える。単に流行っているからと俗な話題を取り上げ、深堀します!という意気込みで論文を書くというのは大学生のやるべきことではない。(それでもタイトルにマッチングアプリがはいっているのは何と言うか…)
マチアプ論文の話題はさておき、やっぱり所属学部と関係のあるテーマを選ぶべきだとも思う。学部生が4年間勉強したということを唯一残せる手段が卒論なんだから。
だからこそ、でっかいテーマを、経済学なら格差問題とか経済成長の問題とかを、学部生のレベルで構わないから(データをみて論じるだけでもいいから)、真正面から取り組むべきなんじゃないかなと思う。方法とか方向性が分からなくなったら指導教員に相談してもいいし、そのためにゼミの先生がいるのである。卒論のレベルで、既存のliteratureに大貢献するような論文が書けるわけじゃないんだから、自信もって書けばいいんだよ。
と、色んな卒論をみてふと思ったことがある。「大卒賃金プレミアム」とか言われるが、大卒者の方がそれ未満の学歴の人たちより賃金が高いというデータがある。学歴と賃金の問題は最近特にホットイシューだ。税務署で働いている友達に聞いた身近な話を例に挙げると、高卒で働いている子たちの方が若干給料(やボーナスもだっけ?)が低いのと、勤務年数に応じた給料の伸び幅が小さいだとか言っていた気がする。
いったい大卒者の何が評価されて賃金が上乗せされているのか…。学士号の有無?4年間勉強頑張ったで賞?大学受験を突破した能力への信頼?
学士号というのは、GPAがカスであっても基本単位を全部取り卒業論文を出せば与えられるはず(文系は特に)。学士号の有無が賃金の差の決定打ならば、マチアプ研究論文やオタク聖地巡礼論文が将来の給料の伸び率だかボーナスだかが高卒者のそれらよりも高くなることを担保するという何ともモヤモヤする感じになるなあ…
※理系と理系の研究職についてはまったく知りません(予防線)